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中高生の頃、雑誌「オリーブ」を購読していた。山ガールの前身となるような人達が、誌面を埋め尽くす前の「オリーブ」である。

 

高校時代の中頃には、直木賞を受賞して間もない頃の、山田詠美の連載が始まった。下世話な媒体が騒いでいたのと裏腹に、年上のその人の美しい文章は、私の心を虜にし、月二回の雑誌の発売が余計に待ち遠しくなった。

 

中学に入ったあたりから、自分が集団行動に適さないことを自覚し、一歩離れた場所から物事を見るようになっていた。高校時代もその延長にあった。

 

入学してしばらくして、当時は10万人に一人と言われる難病指定の疾患にかかり、通院が続く。ほぼ同時期に、母は癌で入退院を繰り返し、手伝いに来てくれる親戚達への気遣い、家事、体力的にも精神的にもかなりきていた。

 

学校へ行ったら行ったで、大勢で大声を出すクラスメイト達、外見がとても可愛いのは認めるが、自分のことを名前で呼び、絵に描いたようなぶりっ子ちゃんが学年のアイドルになる高校には辟易し、入りたくもない都立高校に入学した自分がバカだったし、疾患にかかる自分の人生を責めていた。何年も経ってから人に話せた、一人の異性のことで思い悩んでいた時期でもあった。

 

少なからずとも、私のように、集団行動を好まない、冷めた人達は存在し、必要があれば、彼女達と過ごせるのは、幸いではあったし、いまだに付き合いが続いているということは、運命的な出会いだったと言える。

 

山田詠美の『放課後の音符(キーノート)』は、クールというよりドライな自分を許してくれた気がした。短編に登場する女性達に勇気づけられたのだ。

 

「Body Cocktail」のカナ、「Crystal Silence」のマリ、「Red Zone」の金木犀の女性、「Jay-Walk」のヒミコとヨリコさん。私の救いになった。

 

大学時代での一般心理学のクラスで知ったが、当時の学問では、人間は22-23歳までが人格形成の時期になるそうだから、『放課後の音符(キーノート)』は私の一部になっていることだろう。

 

後、素養があったからこそ本格的に音楽オタクになり、アフリカン・アメリカン・カルチャーにもはまり、大学でも学ぶようになるが、『放課後の音符(キーノート)』以外の山田作品を本格的に読み出すのは、リアルに「ソウル・ミュージック・ラヴァーズ・オンリー」になってからだったと思う。高校を卒業してから、二十代前半までに、旧刊、発売されるたびに新刊を読み、サイン会にまで行くようになった。

 

社会人になり、30歳を過ぎると、そこまでのファンではなくなり、『風味絶佳』を最後に山田作品を読んでいない。小説を読むとしたら、純文学よりも、ミステリーや経済もののほうが楽しくなってしまった。しかし、同世代の、学生時代のうちに彼女の作品を読んだ女性とは、多いに盛り上がることができる。「洗礼と呪縛を受けたわ」と。

 

共通点は、「セ◯◯ス」を「エ◯チした」とは言わない(洗礼)、自分のことを名前で呼ぶ人を軽蔑する(洗礼)、立食パーティでは物を食べない(呪縛)。初めてバーで飲んだお酒はジントニックというのは、ただの気取り。細かく話せる人とは、とても付き合いやすい。

 

山田詠美という人は、文壇デビューしたと同時に、世の中と戦わないと身を守ることができなかったと思う。才能の持ち主であること、見た目にインパクトがあること、女性であること、有色人種の外国人と付き合っていたこと、賞をもらったと思いきや、恋人の逮捕。『放課後の音符(キーノート)』はその後の連載で、内容は中高校生向けに書いたものだったけど、社会への反骨精神はよく出ていた。

 

あれから26年の歳月が流れた。時代も変わった。大量より少量で質を、夜より昼、お酒より安全な水だろう。しかし、女性を取り巻く環境はさほど変わっていないのではないか。

 

「女の子」が主流で、「女の子」も事なかれであることを望む。「女の子」だから流す。間違っていること、特に法律違反なことへ、疑問に思うことも、果敢に立ち向かうこともしない。遠回りでも行動を起こさない。根本には、男性に嫌われたくないという、恐れと寂しさがあるのではないか。「女の子」が声をあげあないから「女性の活用を」と社会が求める。主人が召使いに命令しているみたい。

 

四十代になっても、『放課後の音符(キーノート)』に出てくる、金木犀の女性、ヨリコさん達を素敵に思う。媚びない女の人が好きだ。

 

 

 

Flickr:  Giles Turnbull さん 「Gin and Tonic」

 

    

 

 

ブロガー、リモートIT職、選書家、音楽配信、書籍企画 / Plenitude Interactions LLC / HipHop、アフリカンアメリカン文学 / ミニマリスト / 潰瘍性大腸炎 UC IBD 30年、ナルコレプシー、強膜炎 / 2017年10月より約20年ぶりに学生(通信制大学科目履修生) / 元音楽レーベル&出版社勤め / アイコンはマジョリ画の妖艶な女帝 / お気軽にご連絡ください hello@plen-act.com / 現在、仕事のための勉強と大学の勉強でせわしく過ごしているため、通常の投稿がしばらくの間、週1-2回ペースになります(11/06/2017)

 
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