私には、長年の人体実験によって導き出した食事のルールがある。

十五歳で発症した潰瘍性大腸炎。主治医は何を食べても構わないと言うし、この病気が食べ物だけで左右されるわけでもない。それでも私は、不調をきたすものを、少しずつ食卓から遠ざけてきた。好物もその例外ではない。

陸生哺乳類の肉は食べず、葉野菜は、アブラナ科のものを選ぶことが多い。小松菜、水菜、チンゲン菜などである。同じアブラナ科でも、ブロッコリーは食べるが、キャベツや辛味の強いものは口にしない。

真夏になると、できるだけ火を使いたくない。使うとしても、ほんの数分で終わるものがいい。そんな夏に決まって作るものがある。「本多静六のホルモン漬け」だ。

本多静六は、日比谷公園をはじめ全国の公園を手がけた「公園の父」である。薄給から巨万の富を築いた人物としても知られている。晩年まで、かくしゃくとして過ごした彼が実践していたというのが、植物の新芽などをきれいに洗って塩漬けにする、独自の「ホルモン漬け」だった。

さすがに八百屋やスーパーで新芽ばかりを買い揃えるのは難しいので、これを自分流にアレンジしている。小松菜や水菜、時にはチンゲン菜を細かく刻み、塩を振って一晩おく。そして食べる直前にたっぷりの水で洗い、ギュッと絞る。それだけだ。塩は、平釜製法の海塩を使う。

昆布も、だしも使わない。ただの葉野菜と塩だけなのに、不思議なくらいおいしい。本多翁は炊き立てのご飯にのせて食べていたという。私はそのままつまんだり、米粒の形をした小さなパスタにたっぷりのせたりして食べる。

最後に、気に入っている三年醸造の醤油を少しと、サラダ油かぶどう油をかける。あっさりとした塩気にほどよいコクが加わり、それだけで十分な一食になる。

根元の泥を落とすために葉の隅々までていねいに洗わなければならないし、細かく刻む手間もかかる。それでも、火を使わずに済むというだけで、夏の台所では楽なのである。米粒のパスタも、そうめんほどの時間で火が通る。

制約があるからこそ、たどり着ける食卓がある。青菜を刻み、塩をまぶしていると、この身体にはこのからだの暮らし方があるのだと思う。それは、夏を健やかに過ごすための、小さな知恵なのである。

 

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巨万の富を築いた本多静六が、日々口にしていた「ホルモン漬け」
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