私はアマゾンのAudible(オーディブル)という、月額制のサーヴィスの音声書籍をよく利用する。なぜ「よく」になるかというと、翌月、聞く時間が取れないとわかっているときは、いったん退会するからだ。

何年も前に初めて利用した時は、配信タイトルが少なかった。試しにダウンロードした、日本語版を熟読していたフランス人著者の社会科学系の英語の本は、朗読者の声がかすれてきて、聞くに耐えられなかった。日本語のタイトルにも限りがあった。ファンではないが、ビジネス系というか自己啓発系の、ある本も聞いてみた。読み手は著者だった。その著者はライターを使って本を書くことを公言していた。どうしても本人の言葉として聞こえてこなかった。さらに、この方は媒体で標準語を話そうとしているのはよくわかっていたのだけど、朗読となると、出身地のイントネーションが丸出しになっていた。私は東京で生まれ育ったが、その土地の方言やイントネーションやアクセントをよく知っている。ファンでなく、むしろ好きではない人だが、一生懸命読んでいる分、聞いていてしんどくなってしまった。数分で聞くのをやめ、サーヴィスを停止した。

その後に利用を再開すると、プロによる朗読が増えていた。タイトルも増え、数年前から今にかけて、さらにいろいろな作家や文筆家の本が聞けるようになっている。

私は、家事をやりながら聞いている。なんらかの理由で避けていた古典、読もうと思っていたのに忘れていたもの、紙の本で何度も読んだものなどを、1.5倍速くらいにして聞く。長編や上下巻ものでもあっという間に聞き終わる。時々、この書き手にはこの朗読者の声は合わないのではというものもあるが、発声の訓練をした人たちは、やはりうまい。特に、ヴェテランの俳優さんや女優さんが読む小説はとてもいい。AIが読んでいるものもあるが、だんだんと賢くなっていて、不快ではない。でも人間の声のほうが好みではある。

Audibleを利用するのは、読書の習慣があり、かつ音声で本を聞ける環境にある人たちなのだろう。玉石混交のコンテンツに囲まれる昨今、出版社が発行する本にプロの朗読で触れられるとは、贅沢な時代になったものだ。

物心がついた時に視界に入ってきたものは、母と父の姿と、平屋の木造官舎の二間のうちの四畳半を三方から囲むスチール製の本棚だけだった。読書中は、ほんの短い時間でも、本に囲まれた空間ができる。耳から聞く本もまた同じである。

 

のぞいてみてください。
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Audible(オーディブル)